現代のグローバルな人気度やレストランの数で言えば、イタリア料理や日本料理はトップクラスです。それでも世界三大料理の枠組みに入らない理由には、料理としての思想と発展プロセスの違いがあります。
まずイタリア料理が入らない最大の理由は、「中央集権的な宮廷料理ではなく、各地方の郷土料理(クッチーナ・ポポラーレ)の集合体として発展した」歴史にあります。イタリアが国家として統一されたのは1861年と比較的最近であり、それまでは小国家や都市国家の集まりでした。素材の持ち味を生かした家庭的で素朴な美味さが魅力である反面、フランスのような厳格な宮廷体系化が行われなかったことが要因です。なお、フランス料理の洗練自体、16世紀にフィレンツェのメディチ家からカトリーヌ・ド・メディシスが嫁いだ際にイタリアの食文化が伝わったことが契機ですが、それを国家規模で体系化したのはフランスでした。
一方、日本料理(和食)が入らない理由も同様に思想の違いにあります。和食は「素材の味を極力いじらずに引き出す」という引き算の美学と、水と出汁を中心とした独自の文化です。対して、世界三大料理の選定基準は「ソースやスパイス、火力を複雑に組み合わせて食材を再構築する」という足し算・技術集約型の料理でした。また、19世紀から20世紀初頭の西洋において、生魚を食べる文化や出汁の繊細さは正当に評価されにくかったという時代背景も影響しています。