育児中の親から頻繁に聞かれるのが、「教えたわけでもないのに、いつの間にかアンパンマンに夢中になっていた」という声です。子どもがアンパンマンにハマる年齢は生後半年から1歳前後が圧倒的に多く、言葉を理解する前の段階から強い興味を示します。この現象は偶然ではなく、赤ちゃんの認知発達に基づいた明確な科学的理由が存在します。
乳児の視覚は月齢が浅い頃はぼやけており、輪郭がはっきりした「丸い形状」や「目と口が配置された顔のパターン」を本能的に探す「選好注視」という特性を持っています。アンパンマンの造形は、正円に近い輪郭、赤い大きな丸い鼻と頬、はっきりした黒い目という極めて認識しやすい要素で構成されています。生後間もない赤ちゃんにとって、最も安心感を抱き、認識しやすい顔の黄金比が自然に組み込まれているのです。
さらに聴覚面でも巧妙な特徴があります。「アンパンマン」という名称に含まれる「パ行(破裂音)」と「ン(撥音)」の組み合わせは、乳児にとって聞き取りやすく、自ら発音しやすい音の代表格です。「ママ」「パパ」に次いで「アンパン」と発語する子どもが多いのも、音響心理学的なアプローチが見事に機能している証拠と言えます。