九相図の歴史において、近代の入り口で圧倒的な異彩を放ったのが、幕末から明治にかけて活躍した天才絵師・河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)です。
暁斎が遺した『九相図』(肉筆画)は、伝統的な仏教絵画の枠組みを遥かに超えた生々しい迫力を持っています。幼少期に神田川で拾った生首を写生したという伝説を持つ暁斎は、徹底した観察眼と卓越した筆力で、死体の腐敗プロセスを描き切りました。
暁斎の描く遊女の九相図では、豪華絢爛な打ち掛けの鮮やかな色彩と、徐々に黒ずみ腐乱していく肌の対比が凄まじい緊迫感を生んでいます。単なる宗教的道徳の押し付けにとどまらず、「生きることの生々しさと死の絶対性」を生の芸術として昇華させた肉筆画は、国内外の美術研究者から今なお極めて高い評価を受けています。