蚊取り線香の歴史は、明治時代に創業した大日本除虫菊株式会社の創業者、上山英一郎の手によって始まった。当時、アメリカから渡来した除虫菊(シロバナムシヨケギク)の花粉を活用し、当初は棒状の線香として製造されていた。しかし棒状では燃焼時間が40分程度と短く、寝ている間に燃え尽きてしまう欠点があった。
「朝まで効果を持続させたい」という強い執念が生み出したのが、世界初となる渦巻き型の形状だ。妻ゆきの助言を着想の原点に、手作業で一本ずつ渦状に巻き上げる試行錯誤が繰り返された。この渦巻き構造によって燃焼時間を約6時間に伸ばすことに成功し、夜間の蚊対策は劇的な進化を遂げたのである。のちに天然成分の除虫菊から、安全性の高い合成ピレスロイドへと有効成分は進化したものの、あの渦巻きのフォルムと安心感は、今も日本の夏を支える象徴として君臨している。