ポルコの代名詞とも言えるのが、真紅の飛行艇サボイアS.21だ。木製骨組みとキャンバス地で組まれたこの愛機は、単なる乗り物ではなく、彼の魂そのものである。ライバルのカーチスに一度は破壊されながらも、ミラノのピッコロ社で若き女性技師フィオの手によって蘇るプロセスは、ポルコの停滞していた人生が再び動き出す寓意でもある。
そして、このキャラクターに命を吹き込んだ声優・森山周一郎の功績は極めて大きい。酒とタバコの匂いが染みついた低音ボイスは、背負った悲劇の重みと、軽妙な大人の余裕を見事に同居させていた。宮崎駿監督が求めた「中年男の哀愁とダンディズム」は、森山の唯一無二の声を得たことで、世界のアニメ史に残るアイコンへと結実したのである。