かつて市場を支配していた「無欠の愛らしさ」を持つマスコット像は、今や劇的な変容を遂げている。その潮流を決定づけたのが、イラストレーターのナガノが描く「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」や、クリエイターの可哀想に!が生み出した「おぱんちゅうさぎ」だ。理不尽な労働に耐え、理不尽なトラブルに巻き込まれ、涙目になりながらも健気に生きる姿は、過酷な現実をサバイブする現代人のメンタリティと鮮烈にシンクロする。
完璧なヒーローではなく、報われない瞬間を抱えた存在だからこそ、見る者は自らを投影し、強烈な愛着を抱く。「可哀想だからこそ愛おしい」という感情の反転現象は、従来のファンシーグッズ市場のルールを完全に塗り替えた。彼らが流す一粒の汗や涙が、数億回のリツイートと莫大な購買行動を生み出す原動力となっている。