全国の神社から神々が姿を消す神無月。その行き先こそが、島根県に鎮座する出雲大社だ。全国の八百万の神々は、国譲りの神話で名高い大国主大神のもとへと一斉に旅立つ。この期間、各地の社殿では神職が静かに留守を守り、出雲だけが圧倒的な賑わいと厳粛さに包まれるという、日本特有の宗教的コントラストが生まれる。
この伝承は単なる民俗的なおとぎ話にとどまらない。神社本庁が包括する全国数万の神社ネットワークの根底にも、互いの神々を敬い、年に一度絆を結び直すという共生思想が流れている。神々が留守になる地域でも決して不吉とされるわけではなく、恵比寿神のように留守居役を務める神への感謝を捧げる風習が残るなど、土地ごとの深い知恵が息づいている。