なぜ広告クリエイターは、これほどまでに視聴者を苛立たせる手法をあえて採用してしまうのでしょうか。その背景には、広告心理学における不快感と「認知獲得」の歪んだバランスが存在します。
マーケティングの世界には、接触回数が増えるほど対象に好意を持つようになる「単純接触効果(ザイオンス効果)」という定説があります。しかし、これには重要な前提があり、「最初の印象がニュートラル以上であること」が必要です。最初から不快感を与えてしまう刺激を短期間に何度も繰り返すと、好感度どころか嫌悪感が指数関数的に増幅する「負のスパイラル」に陥ります。
特にテレビCMにおけるうるさいCMの音量演出は、長年議論の的となってきました。放送業界では「ラウドネス規格(ARIB TR-B32)」という音圧基準が定められており、物理的な最大音量は制限されています。しかし、音響処理のコンプレッサーを極限まで効かせて「平均音圧」を限界まで引き上げることで、番組本編よりも体感的に圧倒的にうるさく聴かせる技術的な抜け穴が使われているのが実態です。
また、過剰な連呼による嫌悪感は、心理学でいう「心理的リアクタンス(自由を侵害されたときに生じる反発心)」を引き起こします。人間は、自分の意思と無関係に特定のフレーズを頭に刷り込まれそうになると、自己決定権を守るための防衛本能として、その対象(=企業や商品)に対して強い拒絶反応を示すようにプログラムされているのです。