午前3時。まだ星が輝く暗闇の中、厨房の作業場にはすでに明かりが灯る。機械による大量生産が当たり前となった現代の和菓子製造業において、ここでは今もなお熟練の和菓子職人が自らの手のひらの感覚だけを頼りに生地をこね、餡を包み込んでいる。
「季節の変わり目、雨の日、風の強い日。毎日粉の機嫌は違います。機械に任せてしまえば形は揃うが、口に入れた瞬間のあの『ほどけ具合』は消えてしまう」と古参の職人は語る。皮の厚みを均一にしつつ、蒸し上がりに餡の風味が最も引き立つ絶妙な薄さを保つ作業は、長年の鍛錬を経た職人にしか成し得ない神業だ。1日に作れる個数はどうしても限られ、それが「売り切れ必至」と呼ばれる最大の要因となっている。