なぜ歴史学者を怒らせるのか?『逆説の日本史』が暴く教科書の嘘の疑問点について、最新情報を取りまとめてご紹介します。

学校で習う日本史の授業を思い出してほしい。政治闘争や合戦の記録、年号と人名の羅列。そこに決定的に欠落している要素がある。当時の人間たちを心の底から突き動かしていた「恐怖」の感情だ。

井沢元彦が暴き出した最大の急所は、まさにここにある。日本人の行動原理の根底には、太古から怨霊信仰と言霊の思想が分かちがたく根を張っていた。菅原道真がなぜ天満宮として祀られたのか。早良親王や崇徳上皇の悲劇に、権力者たちはなぜあれほど怯え、莫大な費用を投じて鎮魂の儀式を繰り返したのか。教科書的な記述では、単なる政争の敗者として片付けられがちな事件の裏に、国家を揺るがす「祟りへの恐怖」があった。

現代の合理主義の物差しだけで過去を測れば、彼らの行動は不可解な迷信にしか見えない。だからこそ従来の歴史学は、それらを非科学的な枝葉として切り捨ててきた。しかし、同時代を生きる人間にとって、怨霊の祟りは疫病や天変地異を引き起こす現実の脅威そのものだった。書かれざるタブーを直視することなしに、日本史の真層に辿り着くことはできない。