旧開智学校を語る上で欠かせないのが、西洋建築の要素を日本の伝統的な大工技術で再構築した「擬洋風建築」の美しさです。設計と施工を一手に担ったのは、地元松本の大工棟梁であった立石清重(たていし せいじゅう)でした。
清重は東京へ赴き、開成学校や東京開運会社といった最先端の洋風建築を視察・スケッチし、その記憶と伝統的な社寺建築の技法を融合させて独自の意匠を生み出しました。その集大成が、屋根の中央にそびえる八角塔(太鼓楼)と、正面車寄に掲げられた「開智学校」の扁額を支える2体の天使(エンジェル)の彫刻です。
青空をバックに舞う天使のレリーフは、西洋の図版を手本にしながらも、どこか日本の伝統的な天女や木彫の温もりを感じさせます。また、窓には当時非常に貴重だった舶来のギヤマン(色ガラス)が嵌め込まれ、白漆喰の壁と木枠のコントラストが、訪れる人々に明治のハイカラな空気感を鮮烈に伝えています。