沖縄出身のボーカリストに共通して感じられる「声の抜けの良さ」「強靭なリズム感」「心に直接突き刺さるエモーショナルな表現力」には、明確な歴史的・文化的な背景が存在します。
最大の音楽的特徴として挙げられるのが、「ド・ミ・ファ・ソ・シ」で構成される琉球音階(沖縄音階)の存在です。本土の伝統音楽に多い短調主体のヨナ抜き音階とは異なり、琉球音階は長三度を含みながらも独特の浮遊感と祝祭感、そして切なさを内包しています。幼少期から三線の音色やエイサーの地謡(じかた)に触れて育つことで、自然と豊かな音程感覚と開放的な発声法が身体に染み付いていきます。
さらに見逃せないのが、戦後の歴史的背景による米軍基地発のブラックミュージック文化の早期浸透です。本土よりもはるか以前から、ラジオ局「FEN(現AFN)」やコザ(現沖縄市)などのライブバーを通じて、本場のモータウン、ソウル、ファンク、ロックが日常的に鳴り響いていました。民謡由来の開放的な喉の使い方に、アメリカ直系のグルーヴ感が融合した結果、他地域にはない唯一無二のハイブリッドな歌唱スタイルが完成したのです。