トラウマ級のインパクトを残す作品には、共通して強烈なアイコニック・ヒロインが存在する。伊藤潤二の代表作『富江』に登場する富江は、何度殺されても蘇り、男たちを狂気へと狂わせる究極のファム・ファタールだ。「美しすぎるがゆえに壊れていく」この構図は、現代のダークアートにおける欠かせないプロトタイプとなっている。
また、今敏監督の名作アニメ『パーフェクトブルー』に見られるサイコホラーの演出も大きい。現実と妄想の境界が崩壊していく過程、アイデンティティが剥ぎ取られる少女の恐怖。あの精神的圧迫感と狂気は、現代のイラストレーターたちが一枚絵の中に閉じ込めようと試みる心理的テーマのバックボーンだ。外面的なグロテスクさだけでなく、人間の内面に潜む狂気や歪みを表現するアプローチが、現代のアートにおいてより洗練されている。