東京駅の構内や駅舎には、激動の近現代史を物語る重要な史跡が今も静かに息づいています。その象徴が、丸の内駅舎の中央に設けられた皇室専用の出入口と「皇室専用貴賓室」です。皇室の方々が地方行幸啓や公務で鉄道を利用される際に使われる特別な空間であり、一般の乗降客が目にする中央口の奥に厳かな風格を保ったまま維持されています。
また、丸の内南口の切符売り場付近には、歴史の転換点を記録する小さなプレートが埋め込まれています。1921年(大正10年)11月4日、日本初の本格的政党内閣を率いた平民宰相・原敬(はらたかし)が暗殺された遭難現場です。現場の床には事件発生地点を示す円形の鋲が打たれ、壁面には解説板が設置されており、近代政治史の緊迫した瞬間を今に伝えています。
さらに、赤レンガ駅舎と共に歩んできたのが、1915年(大正4年)に開業した「東京ステーションホテル」です。ヨーロッパの壮麗なホテルに匹敵する名門として誕生し、川端康成が逗留して執筆活動を行ったり、松本清張が代表作『点と線』のトリックを着想したりした場所としても知られています。2012年の駅舎復原とともにリニューアルオープンし、創建当時のレンガ壁を客室やロビーの随所に見ることができる唯一無二のクラシックホテルとして高い人気を誇っています。