本作を単なる子供向け冒険活劇から重厚な人間ドラマへと押し上げたのは、敵対するトルメキア軍や辺境の剣士を演じたベテラン陣の演技力に他ならない。なかでも冷徹なリアリストとして描かれたクシャナ皇女役の榊原良子の演技は圧巻だった。
榊原はクシャナを単なる悪役として演じることを拒み、左腕を蟲に奪われた過去や、軍を率いる指導者としての孤独を徹底的に掘り下げてマイクに向かった。その結果生まれた、冷徹さの裏に宿る悲哀と崇高なプライドは、ナウシカと好対照をなす強烈な磁場をスクリーンに生み出した。
また、腐海一の剣客ユパを演じた納谷悟朗の低音ボイスは、荒廃した世界を放浪する男の年輪と包容力を完璧に描き出していた。『ルパン三世』の銭形警部や『宇宙戦艦ヤマト』の沖田十三役でも知られた納谷の台詞回しは、過剰な説明を排した脚本の行間を埋め尽くすほどの説得力を誇った。