鶏肉の水分を逃さず、なすに適度なコクを与えるためには、調理前のわずか数分間に施す「下処理の設計」がすべてを決める。
まず鶏肉(もも肉・むね肉問わず)は、繊維を断ち切るようにそぎ切りにした後、塩と酒を揉み込み、片栗粉を薄くまとわせる。この一手間が肉の表面に不可視の保水シールドを形成し、加熱による肉汁の流出を劇的に防ぐ。一方のなすは、乱切りにした直後に少量のサラダ油を全体に絡めておく「オイルコーティング」を施すのがプロの常識だ。あらかじめ油の膜を作っておくことで、フライパンの中で必要以上に油を吸いすぎる事態を回避し、内部の水分で蒸し焼き状態を作り出せる。
そして味付けの黄金比は「醤油 2:みりん 2:酒 1:砂糖 0.5:穀物酢 1」。この配合により、加熱時に糖分とアミノ酸がメイラード反応を起こし、芳醇な香気成分が立ち上る。片栗粉のコーティングとなすのトロミが調味料を抱き込むため、出来立ての熱々はもちろんのこと、完全に冷めた状態でも肉のジューシーさが損なわれない。お弁当のおかずとしても群を抜く完成度を誇る理由がここにある。