本作の骨組みを作り上げたのは、ヒットメーカーであり稀代の作詞家としても知られる阿久悠の自伝的小説である。故郷・淡路島での実体験をベースにした物語には、戦後の混乱期に生きた人々の悲哀とたくましさが泥臭く描かれていた。この重厚な原作の映画化に挑んだのが、日本映画界の巨匠・篠田正浩監督だ。
篠田監督は、単なる懐古趣味の作品にするつもりは毛頭なかった。敗戦という価値観の崩壊の中で、子どもたちがアメリカから渡ってきた「野球」という未知の文化に魅了され、白球を追う姿。そこに、日本の再生と若者たちの葛藤を鮮やかに重ね合わせた。本作は、戦後日本が歩んできた軌跡を写し取る上質な青春ドラマ映画であり、時代を超えて語り継がれるべき歴史的価値を備えている。