アリーナ席の最大の魅力は、なんといっても演者と同一フロアに立つ圧倒的な没入感と音圧だ。前方ブロックであれば表情の機微まで肉眼で捉えられ、低音が身体の芯を震わせる。ただし、フロアには傾斜がない。後方ブロックに配置された場合、前列の観客の身長や頭の位置によっては視界が遮られ、ステージ上の動線が見えにくくなるリスクを孕んでいる。足元の快適さを重視するなら、厚底スニーカーなど視覚を確保する工夫が求められるエリアだ。
対照的に、スタンド席はすり鉢状の美しい傾斜によって、どの列からでも視界がクリアに抜ける設計になっている。スタンド前列(A〜G列付近)はアリーナ後方よりも演者を近くに見下ろせるケースが多く、視界のストレスが極めて少ない。舞台照明の幾何学的な広がりや特効の全貌を一望できるのもスタンド席ならではの醍醐味だ。
音響面においてもスタンド席には定評がある。天井の吸音ルーバーと楕円構造の壁面が綿密に計算されており、アリーナ特有の反響音(ブーミング)がスタンド中段付近で美しく収束するようにチューニングされている。純粋な音楽鑑賞のクオリティという観点では、スタンド席こそが最もバランスの取れた特等席と言えるかもしれない。