第14作『寅次郎子守唄』から最終第48作まで、20年以上にわたって車竜造を演じ続けたのが下條正巳です。新劇出身の確かな演技力を持つ下條の起用により、おいちゃんという役柄はひとつの完成形を迎えました。
下條が演じたおいちゃんは、小柄で温和、そして何より情にもろい性格が際立っていました。寅次郎が旅先から帰ってくれば誰よりも喜び、寅次郎が失恋して再び旅立つときには、背中を丸めて寂しそうに見送る姿がファンの涙を誘いました。
激しい怒声でぶつかり合った初期から、寅次郎の生き方をどこか諦めつつも愛おしく見守る成熟期へと作品のトーンが変化していく中で、下條の包容力に満ちた佇まいは不可欠なピースでした。渥美清の体調が思わしくなくなった後期シリーズにおいても、茶の間の安定した空気感を守り続けた功績は計り知れません。