「朝、いつも通り『行ってくる』と声をかけて出かけた姿が最後でした。悩んでいる様子も、変わった言動も一切ありませんでした」
そう声を絞り出すのは、父親の帰りを待ち続ける長男だ。失踪当日、自室には普段愛用していた財布やスマートフォン、常備薬がそのまま残されていた。計画的な失踪であれば持ち出すはずの生活必需品が手つかずの状態で残されていた事実は、突発的な事態の発生を強く示唆している。
現場近くの林道脇では、本人が所持していたとみられるハンカチと飲料水のペットボトルが発見された。争ったような形跡はなく、整然と置かれていたという。なぜその場所で立ち止まったのか。誰かと待ち合わせていたのか、あるいは体調の急変に見舞われたのか。家族の手元に残された手がかりはあまりに少なく、疑念と不安だけが募る。