『涙の連絡船』の大きな魅力は、情景が鮮やかに目に浮かぶ緻密な作詞と、哀切極まるメロディラインの融合にあります。作詞を手掛けた関沢新一氏は、特撮映画『ゴジラ』シリーズの脚本家としても高名なマルチクリエイターであり、言葉の視覚的喚起力に長けていました。
歌詞に登場する「汽笛」「波止場」「未練のテープ」といった港町のモチーフは、本州と北海道を結んでいた「青函連絡船」が舞台のモデルと目されています。当時、集団就職や出稼ぎで故郷を離れる若者たちの移動手段でもあった連絡船は、日本中にとって「別れの象徴」そのものでした。引き裂かれる恋人たちの感情を、冷たい海風が吹きつける北の港町に重ね合わせた関沢氏の筆致が見事に光ります。
これに対し、師匠である市川昭介氏は、都はるみさんの声域の広さと独特の節回しを最大限に活かした旋律を構築しました。哀愁漂うマイナー調でありながら、サビに向かって感情が激しく波打つドラマチックな曲調は、昭和歌謡の真骨頂といえます。