菅井きんさんの代名詞といえば、時代劇『必殺』シリーズ(『必殺仕置人』『必殺仕事人』など)で演じた中村主水の姑・中村せん役です。婿養子である主水(藤田まことさん)を、娘のりつ(白木万理さん)とともにネチネチといびり倒すユーモラスな掛け合いは、番組屈指の名物シーンとなりました。
特に、怒気を込めて主水を呼びつける「ムコ殿!」のセリフはアドリブ交じりに研ぎ澄まされ、菅井さんの代名詞として社会現象を巻き起こしました。
しかし、放送開始当初はあまりにいびり役がハマりすぎたため、私生活で思わぬ悩みを抱えることになります。当時、年頃だった実の娘の縁談に悪影響が出るのではないかと危惧した菅井さんは、プロデューサーに「役を降板させてほしい」と涙ながらに直訴したという有名なエピソードが残っています。
その際、映画プロデューサーであった夫から「それだけ世間に演技を認められている証拠じゃないか」と励まされ、降板を思いとどまったといいます。主水を演じた藤田まことさんとは私生活でも固い信頼で結ばれた戦友であり、2010年に藤田さんが先立たれた際、菅井さんは深い悲しみを語っていました。