宝石のように透き通るブルーアイですが、生物学的な事実として猫の虹彩の中に青い色素そのものは一切存在しません。瞳が青く輝く物理的な理由は、空が青く見える現象と同じ「レイリー散乱」と呼ばれる光の散乱現象によるものです。
通常、猫の目の色は虹彩に含まれるメラニン色素の量によって決定されます。メラニン色素が極めて多ければカッパー(赤銅色)やアンバー(琥珀色)、中程度であればイエローやゴールド、少なければグリーンやヘーゼルになります。しかし、虹彩の前層(ストロマ)にメラニン色素がほとんど存在しない場合、目に入った可視光線のうち波長の短い「青い光」だけが強く散乱・反射され、人間の目には鮮やかな青色として知覚されます。
成猫になっても青い瞳を維持できる背景には、2026年現在判明している明確な遺伝メカニズムが存在します。主に以下の2つのパターンに大別されます。
- カラーポイント遺伝子(サイアミーズ遺伝子 / cs遺伝子):シャム猫やラグドールに見られる遺伝子で、体温が低い末端部(耳、顔面、四肢、尾)のみに色素が現れる温度感受性アルビノの一種です。体温の高い眼球周辺ではチロシナーゼ酵素が働かず、メラニン色素が形成されないため、成猫になっても生涯にわたり美しい青い目を保持します。
- 優性白毛遺伝子(W遺伝子)および白色斑遺伝子(S遺伝子):全身を真っ白にする「W遺伝子」や、部分的に白いブチを作る「S遺伝子」は、胎生期におけるメラノサイト(色素形成細胞)の移動と定着を強力に抑制します。その結果、被毛だけでなく虹彩へのメラニン供給も遮断され、白猫の青い瞳が生まれます。
分子遺伝学の進展により、成猫で目が青い理由は「単なる個体差」ではなく、メラニン色素の生成と細胞移動を司る遺伝子の厳密なプログラムによる必然的な現象であることが明らかになっています。