多くの家庭でありがちな最大の過ちが、バケツの水と雑巾を用意し、枠全体をビショビショに濡らしてタワシや金属ヘラで擦り落とそうとする力技だ。確かに水分は糊を緩めるが、無計画な給水は繊細な障子の木枠にとって致命傷になりかねない。
杉やヒノキといった建具材は、急激に水分を吸うと繊維が膨張し、乾燥する過程で反りや歪み、接合部の緩みを引き起こす。さらに厄介なのが、木材内部から溶け出す「アク」の存在だ。過剰な水分によって染み出した樹液成分は、新しく貼る障子紙に無残な茶色いシミを残してしまう。職人が「水は必要最小限、かつ局所的に届けるのが鉄則」と口を揃えるのは、木枠の美しさと建具本来の噛み合わせを守るためなのだ。