牡蠣の保存において、最も警戒すべきは目に見えない微生物の増殖と品質劣化です。厚生労働省や保健所の食品衛生監視員への取材でも、毎年報告される貝類起因の健康被害の多くは、購入後の温度管理ミスや誤った下処理に起因していると指摘されています。
家庭で最も頻繁に見られる致命的なミスが、殻付き牡蠣をジッパー付きビニール袋に入れて完全に密閉してしまう行為です。殻付きの牡蠣は店頭に並んでいる段階でも休眠状態で生きています。空気を完全に遮断すると窒息死し、急速に自己消化と腐敗が進んで強烈な異臭を放つ原因になります。また、水揚げ時の泥を落とそうとして水道の流水に長時間浸すのも厳禁です。浸透圧の差によって牡蠣が真水を急激に吸い込み、身がふやけて旨味のアミノ酸が水中に逃げ出してしまうだけでなく、浸透圧ショックで死んでしまいます。
さらに見落とされがちなのが、冷蔵庫内の配置場所です。一般的な冷蔵室の温度(約3〜6℃)では、牡蠣の活動を完全に抑え込むには不十分なケースがあります。牡蠣を休眠状態のまま安全にキープするには、0〜2℃を保つチルド室、またはパーシャル室での保管が絶対条件です。野菜室(約5〜8℃)への放置は、細菌の増殖を助長する自殺行為と言っても過言ではありません。