映画ファンにとって、彼女の代表作として即座に思い浮かぶのが『かもめ食堂』や『めがね』といった一連のライフスタイル系映画だろう。ヘルシンキの街角で、あるいは静かな海辺の町で繰り広げられる物語の中で、彼女が見せる「ただそこに居る」佇まいは、観る者の心を深く癒やしてきた。
とりわけ小林聡美や片桐はいりとの共演シーンで見せる空気感は特別だ。長年のキャリアを通じて培われた信頼関係が、画面越しに自然体な温もりとして漂う。過度な感情表現を排しながらも、互いの視線や呼吸だけで会話を成立させる3人のアンサンブルは、日本映画業界においても稀有な化学反応を生み出した。映画『かもめ食堂』で見せた謎めいた旅行者・サチコ役や、『めがね』でのメルシー散歩の先生・サクラ役は、もたいまさこでなければ成り立たなかったハマり役である。