タタラ場を率いるエボシ御前という指導者の存在は、極めて多面的で興味深い。彼女は森の神々を打ち倒そうとする破壊者でありながら、社会から切り捨てられた女性たちや病者たちにとっては、唯一無二の救世主であった。
当時の社会規範を根底から覆し、ハンセン病の病者たちに武器の製造という重要な役割を与えたエボシ御前。彼女は彼らを憐れむのではなく、一個の戦力、そして一人の人間として対等に扱った。病に冒された身体でありながら、火縄銃という最新兵器を作り出す職人としての矜持。エボシ御前の冷徹なまでの現実主義と慈悲深さが同居する統率力によって、病者たちは自らの居場所と尊厳を取り戻していったのだ。