1976年6月26日、日本武道館。ボクシングの世界ヘビー級王者モハメド・アリとの一戦は、当時のメディアから「世紀の凡戦」と容赦なく叩かれた。がんじがらめのルールに縛られ、マットに寝転がってアリの足を蹴り続けるしかなかった猪木。だが、世間の冷笑を前にしても、彼の眼光が曇ることはなかった。
「世間の常識と戦うことこそが、俺のプロレスリングだ」
後年、この異種格闘技戦は、世界的な総合格闘技の源流として正当な再評価を受けることになる。批判の嵐に晒されながらも、己の信念をミリ単位も曲げなかった姿。あの時放たれた無言の抗議と挑戦のスピリットは、今なお既成概念を壊そうともがくチャレンジャーたちの羅針盤だ。