この緻密な世界観の誕生には、ミスチル桜井和寿のエピソードとしても名高い、当時の卓越した表現力が色濃く反映されています。2000年当時の桜井は、人間の内面にあるエゴイズム、弱さ、そして崇高な愛の形を独自の言語感覚で昇華させる円熟期を迎えていました。
桜井自身、インタビューなどで「かっこ悪い自分や、情けない男の心情」を包み隠さず描く重要性を度々語っています。『つよがり』においても、ヒロイックに女性を救う男ではなく、何もできない無力感に苛まれながら見守ることしかできない男のリアリズムを徹底追求しました。小林武史によるドラマティックなストリングスアレンジと相まって、誰もが一度は経験したことのある「報われない優しさ」の痛みが、芸術的なポップミュージックへと昇華されています。