スポーツの公式タイアップ曲といえば、「夢は叶う」「仲間と共に栄光を掴め」といった勝者のストーリーや努力の結実を鼓舞するアプローチが王道とされてきた。しかし、大森元貴が『僕のこと』の制作にあたって着目したのは、眩しいスポットライトの真逆にある現実だった。
音楽メディアの取材や特番インタビューにおいて、大森は当時を振り返り「全国大会に出場する数多くの高校の中で、最後に優勝の栄冠を手にするのはたった1校だけ。残りのすべてのチーム、何千・何万人もの選手は途中で負けて涙を呑む。だからこそ、敗れ去った側の人生や、報われなかった日々の尊さを肯定できる曲でなければならない」という趣旨の覚悟を明かしている。
楽曲の歌い出しとなる「僕と君とでは何が違う? おんなじ生き物さ 分かってる」というフレーズには、ステージ上の表現者とリスナー、あるいはフィールドの勝者と敗者を隔てる壁を最初から無力化する意図が込められている。上から目線の激励ではなく、同じ弱さを抱えた人間として横に並び立つ視座こそが、この楽曲の根底に流れる哲学である。