彼の名を幅広い世代に浸透させた決定打のひとつが、特撮ドラマ『手裏剣戦隊ニンニンジャー』で見せた伊賀崎旋風役だろう。忍術を使えない父親というコミカルでどこか頼りない役どころを、底抜けの温かさとペーソスを込めて演じきり、日曜朝の茶の間に強い親近感を植え付けた。
その一方で、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に代表される本格的な時代劇で見せる冷厳な立ち居振る舞いは圧巻だ。権力闘争が渦巻く朝廷や幕府の影で暗躍する人物を、張り詰めた声のトーンと冷たい眼差しで表現し、物語に濃厚なサスペンスを注入した。
陽気なファミリー向け作品から骨太な歴史劇まで、これほど極端な振れ幅を自然体で演じ分けられる表現者は、国内の演劇界を見渡しても指折りの存在である。