世界的な大ヒットとなったミュージカル版の歌唱パートを一切排除し、原作の持つ泥臭いリアリズムと壮大な歴史背景を徹底的に映像化したのが、名門BBCが制作した『レ・ミゼラブル (2018年のテレビドラマ)』である。脚本を手がけたのは、『ハウス・オブ・カード』や数々の古典翻案で名高い名匠アンドリュー・デイヴィス。全6話という贅沢な尺を使い、19世紀初頭のフランス社会が抱える貧困、格差、政治の動乱を容赦のない筆致で描き出した。
本作のジャン・ヴァルジャンを演じたのは、実力派俳優ドミニク・ウェスト。1本のパンを盗んだ罪で19年もの過酷な徒刑生活を送り、人間性を削ぎ落とされた獣のような男が、ひとりの司教の慈悲によって魂の再生へと向かう過程を、凄まじい肉体性と哀切を込めて演じきった。彼を執拗に追う警部ジャヴェール(デヴィッド・オイェロウォ)との息詰まる心理戦は、単なる善悪の対立を超えた「正義の衝突」として観る者の胸に突き刺さる。