本作の最大の魅力は、シンプルでありながら極限まで研ぎ澄まされた劇展開にあります。名作と称される丘の一本松のあらすじと、物語を彩る主要な登場人物の構図を整理します。
物語の舞台は、昔ながらの鍛冶屋を営む良豊(りょうほう)の家。良豊は職人気質で頑固一徹、口下手ながらも息子を誰よりも大切に思っています。しかし、一人息子の樽金(たるがにー)は父親への反発から仕事を投げ出し、遊び歩いては借金を作る始末。母のカマドは父子の板挟みになりながら、懸命に家庭を繋ぎ止めようと奔走します。
やがて樽金の借金トラブルが発覚し、激怒した父・良豊は息子を勘当。絶望した樽金は村の高台にある一本松の丘へと向かいます。そこで繰り広げられる父子の直接対話、互いの不器用な本音の吐露、そして母や周囲の人々の温かい情愛が交錯し、物語は感動のクライマックスへと雪崩れ込みます。
劇中では、樽金の許嫁であるウサ小や、個性豊かな村人たちが繰り広げるコミカルな掛け合いが随所に挿入されます。父・良豊が放つ「親心は言葉にするもんじゃない、背中で見せるものだ」という趣旨の名言や、母親の無償の優しさを乗せた琉球古典・民謡の調べは、観る者の涙腺を刺激してやみません。