高度経済成長の影で急速に取り壊されていった明治の近代建築を後世に残すため、建築家・谷口吉郎と名古屋鉄道の元社長・土川元夫の熱意によって1965年に開村した博物館明治村。愛知県犬山市の観光名所として半世紀以上の歴史を持ちながら、なぜ2026年の現在、若年層からシニア層まで幅広い世代を再び惹きつけているのでしょうか。
その背景には、表層的な「レトロブーム」を超えた、本物志向の体験価値への回帰があります。CGやVRがどれほど進化しても、100年以上前の煉瓦の質感や、ステンドグラスから差し込む光の陰影、手押しカンナで削り出された木造建築の芳香を代替することはできません。社会学的な観点からも、タイパ(時間対効果)を重視する生活様式の反動として、身体感覚を総動員して空間のストーリーを追体験する「スローカルチャー消費」への欲求が高まっています。
さらに、アニメや映画の舞台装置を想起させる圧倒的なロケーション、高度な没入感を提供する体験型エンターテインメントの拡充が、従来の歴史愛好家以外の層を強力に引き寄せる原動力となっています。