小林稔侍という俳優の凄みは、主役を引き立てるいぶし銀の存在感でありながら、ひとたび主演を張れば唯一無二の求心力を放つ点にある。その代表格が、TBSテレビ系列で長年にわたり愛され続けた人気シリーズ『税務調査官・窓際太郎の事件簿』だろう。表向きはうだつの上がらない窓際税務署員でありながら、裏では巨悪を暴く凄腕の査察官という二面性を見事に演じ分け、お茶の間のヒーローとなった。
一方で、映画界における代表作として外せないのが名作『鉄道員(ぽっぽや)』だ。主人公の同僚として、雪深い駅で寡黙に生きる男の哀愁と誠実さを体現し、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を獲得した。さらに山田洋次監督の『武士の一分』などでも見せた重厚な佇まいは、日本の映画産業において欠かすことのできない「市井の人のリアリティ」を銀幕に刻み込んできた。