新国劇の舞台で叩き上げた強固な身体性と発声。若林豪という俳優の骨格を作ったのは、まさに泥臭くも格式高い演劇の現場だった。やがて映像の世界へと進出すると、その日本人離れした彫りの深さとニヒルな色気で、瞬く間にお茶の間を虜にしていく。
とりわけ東映が制作を手掛けた金字塔『Gメン'75』における立花警部役は、彼の代名詞となった。滑走路を並んで歩く刑事たちの姿、漂うハードボイルドな哀愁。若林が放つ鋭い眼光は、過酷な犯罪と対峙する男の孤独と矜持を生々しく体現していた。さらに『必殺仕業人』での赤井剣之介役など、凄みと哀切を併せ持つ役どころでも強烈な爪痕を残す。重厚な時代劇からスリリングな刑事ものまで、彼が出演する作品には必ず、画面の温度をぐっと下げるような冷徹さと、奥底に秘めた情熱が同居していた。日本のテレビドラマが最も熱を帯びていた時代、彼は間違いなくその中心で輝いていた。