彼の役者人生を語る上で、劇作家・つかこうへいとの出会いは絶対に外せない。早稲田大学在学中に旗揚げに参加した「劇団暫(のちのつかこうへい事務所)」での日々は、まさに怒涛の熱気に満ちていた。怒号と閃きが飛び交う稽古場。台本は当日まで書き直され、セリフは現場で肉付けされていく。そんな極限状態のなかで鍛え上げられた柔軟性と爆発力が、俳優・平田満の骨格を形作った。
その結晶こそが、不朽の名作『蒲田行進曲』だ。大スター・銀ちゃんに心酔し、理不尽な要求にも泣き笑いで応え続ける大部屋俳優の「ヤス」。階段落ちという命懸けのスタントに挑む男の哀愁と狂気を、平田は全身全霊で体現した。当時の稽古について平田自身、「毎日のように自分の殻を破らざるを得ないプレッシャーがあったが、あの役を生き抜いた経験がすべての原点」と振り返っている。生身の人間が持つ滑稽さと切なさを同時に噴出させる芝居は、観客の胸を激しく揺さぶった。