古尾谷雅人を精神的に追い詰めた最大の要因は、利息を含めて最終的に約3億円規模にまで膨らみ上がっていた巨額の借金でした。当代随一の人気俳優でありながら、なぜそれほどの負債を抱えることになったのか、その経緯には複雑な事情が存在します。
借金の根本的な発端は、父親が経営していた会社の倒産と莫大な負債の連帯保証人になっていたことでした。父親の他界に伴い、その負債責任が古尾谷雅人の双肩に重くのしかかることになります。家族を思い、逃げることなく返済を引き受けた実直さが、皮肉にも悲劇の引き金を引くことになりました。
さらに追い討ちをかけたのが、所属事務所からの独立と個人事務所の設立です。事務所経営に伴うランニングコストやスタッフへの給与支払い、制作投資などが重なり、赤字が常態化していきました。
折しもバブル崩壊後のテレビ界は制作費の削減が進み、1990年代後半から2000年代初頭にかけてドラマのキャスティング環境も激変。妥協を許さない徹底した役作りで知られる古尾谷雅人は、自らの演技哲学にそぐわない安易な仕事を引き受けることを良しとせず、仕事のオファーと本人のこだわりとの間で仕事量が減少していきました。増え続ける借金返済のプレッシャーと収入減少の板挟みとなり、金融業者からの過酷な取り立てが日夜続く極限状態に追い込まれていったのです。