華々しいデビューの直後、池部良の人生に過酷な暗雲が立ち込めます。太平洋戦争の激化に伴い召集令状が届き、帝国陸軍に入隊。中国戦線から南方戦線へと過酷な転戦を余儀なくされました。池部良の軍歴と戦争体験は、まさに想像を絶する極限の連続でした。
南海のハルマヘラ島への輸送中、乗っていた軍隊輸送船が敵潜水艦の雷撃を受けて沈没。漂流の末に孤島へと流れ着き、補給を断たれたジャングルで飢餓とマラリア、そして部下たちの相次ぐ戦病死に直面します。自決用の手榴弾を握り締め、明日をも知れぬ日々を生き抜いた体験は、彼の精神に消えない刻印を残しました。戦後に見せた、単なる甘い二枚目にとどまらないニヒリズムや、ふとした瞬間に漂う哀愁と凄みは、この過酷な死線を超えた者だけが放つ本物の陰影だったと言えます。