現在でこそ凄みのある名バイプレイヤーとして知られていますが、でんでんの若い頃の歩みは平坦なものではありませんでした。本名は緒方義博(おがた よしひろ)。福岡県中間市で生まれ、水巻町で育った少年は、昭和の大スター・渥美清に強く憧れ、高校卒業と同時に役者を志して上京します。しかし、劇団の門を叩くも即座に芽が出ることはなく、アルバイトで食いつなぐ過酷な下積み生活が長く続きました。
転機が訪れたのは30歳のときでした。1980年に日本テレビ系列で始まった伝説のオーディション番組『お笑いスター誕生!!』に出場を果たします。白のランニングシャツにハチマキ姿、手拍子を交えたコミカルな一人芸を披露し、見事に8週勝ち抜きを達成。金賞を獲得して一躍脚光を浴びることになります。でんでんが元芸人として培った、客の呼吸を読み、間(ま)をコントロールする身体感覚は、この時代に過酷なステージで鍛え上げられたものでした。
興味深いエピソードとして、本格的に俳優へシフトした当初、憧れの渥美清の本名(田所康雄)にあやかって「田所完一」という芸名に改名した時期がありました。しかし、撮影現場で「田所さん」と呼ばれても自分だと認識できず返事が遅れる事態が相次ぎ、わずか4年で馴染み深い「でんでん」の名に戻したという逸話が残っています。自らの足元を見つめ直し、等身大の泥臭さを引き受けたことが、後の開花へと直結していきました。