日本将棋連盟との確執や対局拒否という前代未聞の波紋を呼んだ「陣屋事件」は、升田の妥協を許さない強烈なプロ意識を象徴する出来事だ。理不尽な扱いには組織のトップ相手であっても一歩も引かず、自らの尊厳と棋士の誇りを賭けて立ち向かった。その苛烈な態度は時に物議を醸したが、彼にとっては棋士の命である盤面を守るための必然の闘争だった。
そしてその純粋な探求心が生んだ金字塔が「升田式石田流」である。それまで守勢一辺倒と見なされていた戦型を、先手からダイナミックに主導権を握る超攻撃的布陣へと生まれ変わらせた。この戦法は現代将棋にも脈々と受け継がれ、プロ棋士からアマチュアまで幅広いプレイヤーに愛用されている。単なる思いつきではない。徹底した直感と深い読みが融合した革新戦術の結晶なのだ。