学校からほど近い蓮華寺池公園の静寂を縫うように、生徒たちが登校してくる。自転車のチェーンの音。ノートを開きながら歩く生徒の姿。一見すれば、地方都市にあるごく普通の進学校の風景と何ら変わりはない。
だが、校門を一歩くぐれば空気が変わる。下駄箱に並ぶ泥のついたスパイクと、ずらりと並んだ難関大突破用の分厚い参考書。このギャップにこそ、藤枝東という生態系の神髄がある。誰かに強制されたわけではない。朝早くからグラウンドに立ち、黙々とマーカーを並べる自主練の風景は、何十年もの間、先輩から後輩へと無言のうちに手渡されてきたバトンそのものだ。
派手な掛け声はない。あるのはただ、ボールが芝を擦る摩擦音と、短い指示の声だけだ。過度な装飾を削ぎ落とした練習の密度が、見学者の目を釘付けにする。