富山ブラックという名称を聞くと、多くの人が「醤油の塩分が強烈でご飯がないと食べられないスープ」を想起します。これは昭和30年代に富山中心部で誕生した、肉体労働者の塩分補給を目的とした元祖系ラーメンのイメージが定着しているためです。しかし、麺家いろはが提供する富山ブラックは、その歴史的背景を尊重しつつも、現代の味覚に合わせて洗練された全く異なるアプローチを採用しています。
スープが漆黒に染まる理由は、単に濃口醤油を多用しているからではありません。丸鶏や煮干し、香味野菜から丁寧に抽出した清湯スープに、独自製法で長時間熟成させた「秘伝の黒醤油(魚醤をブレンドした特製かえし)」を合わせています。この熟成プロセスによって醤油特有の塩角が完全に取れ、アミノ酸による重層的な旨味とほのかな甘みが前面に押し出されます。
実際に口へ運ぶと、まず香ばしい黒胡椒の刺激と魚介の芳醇な香りが鼻腔を抜け、後味には驚くほどすっきりとしたキレが残ります。この「視覚的な濃厚さと舌で感じる軽やかさのギャップ」こそが、国内最大級のラーメンイベント「東京ラーメンショー」において通算5度の日本一(優勝・売上1位)に輝いた最大の要因です。