夢遊病の正体は、睡眠と覚醒のスイッチが正常に切り替わらないことで生じる「脳の解離状態」です。人間の睡眠は、浅い眠りや夢を見る「レム睡眠」と、脳を休める深い「ノンレム睡眠」が周期的に繰り返されています。夢遊病が発生するのは、入眠から1〜3時間ほど経った頃に訪れる最も深いノンレム睡眠(ステージN3・徐波睡眠)のタイミングです。
通常、深い眠りの最中は運動機能を制御する神経回路も休止しています。しかし夢遊病では、何らかの刺激によって運動を司る運動野や自律神経系だけが突然目覚め、意識や高度な判断、記憶の定着を担う前頭葉や海馬は眠ったままの状態に陥ります。これが、身体は歩き回っているのに「夢遊病の記憶がない理由」です。
夢を見ながら身体が動いていると思われがちですが、実際には夢すら見ていない深い眠りの底で、身体の自動操縦システムだけが作動している状態といえます。