日本における近代植物学の基礎を築いた牧野富太郎博士もまた、フィールドワークの中で本種の生態を深く観察し、その学術的価値を克明に記録に残した一人だ。植物を愛し、そのありのままの生命力を写し取った博士のスケッチや標本は、植物の本質を見抜く眼差しに満ち溢れている。
また、物理学者であり洒脱な随筆家でもあった寺田寅彦は、日常の何気ない風景の中に佇む樹木や身近な自然現象を観察し、科学者の眼と文学者の感性を融合させた名随筆を遺した。二人が見つめた時代から1世紀近くが経過した現代においても、樹木が語りかける自然界の理は、私たちの知性と感性を刺激し続けてやまない。