本菌が引き起こす最も凄惨な病態が、心臓内部の弁に菌塊を形成する 感染性心内膜炎(Infective Endocarditis) だ。微小な傷口から血流に乗った細菌が心臓弁へ到達すると、驚くべき強固さで弁膜へ付着し、短期間のうちに弁組織を穿孔・破壊していく。一般的なCoNSによる心内膜炎が数ヶ月単位で緩慢に進行するのに対し、本菌によるものは劇症化しやすく、心不全や弁の全壊を招くリスクが極めて高い。
国際的に高い権威を誇る医学誌 The New England Journal of Medicine(NEJM) においても、基礎疾患を持たない若年患者が感染からわずか数日で自己弁の急速な破綻に至り、緊急手術を余儀なくされた深刻な症例が報告されている。弁に付着した菌塊が剥がれて血流に乗り、大脳や主要臓器の血管を塞ぐと、脳梗塞や多発性塞栓症といった取り返しのつかない致命的合併症を即座に引き起こす。