梅毒の皮膚症状において最も特徴的なのは、「見た目の派手さに反して、かゆみや痛みがほとんどない」という点です。一般的な湿疹やアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎であれば強い掻痒感を伴いますが、梅毒による皮疹は自覚症状が乏しく、入浴時や着替えの際に偶然発見されるケースが目立ちます。
感染から約3週間(潜伏期間:10〜90日)で現れる第1期では、病原体が侵入した部位に「初期硬結(硬いしこり)」が生じ、やがて中心部が崩れて浅い潰瘍となる硬性下疳(こうせいげかん)を形成します。皮膚科医や感染症専門医の臨床知見によると、硬性下疳の見分け方は「病変の境界が明瞭で、触れると軟骨のようなコリコリとした硬さがあり、痛みを伴わない」点にあります。一般的な口内炎やヘルペスが強い接触痛を伴うのに対し、痛まない潰瘍は梅毒を疑う強力な指標です。
写真や症例画像との比較において、第1期の病変は性器周辺だけでなく、唇や口腔粘膜、手指などにも現れます。しかし、これらは治療を行わなくても2〜6週間程度で自然に瘢痕を残さず消失するため、「ただの口内炎や肌荒れが治った」と誤認して医療機関への受診機会を逃す事例が頻発しています。