近年、SlackやMicrosoft Teamsといったビジネスチャットツールの普及に伴い、社内コミュニケーションのフラット化が急速に進んでいます。その恩恵として業務スピードは向上したものの、一方で「言葉の査定性」に対する心理的バウンダリー(境界線)の麻痺という新たな摩擦が現場で多発しています。
大手IT企業の人事部関係者は、現場で起きたトラブルについて次のように打ち明けています。
「新卒2〜3年目のメンバーが、全社公開チャンネルで直属の役員に対して『〇〇役員は社内調整のスキルに非常に長けておられるので、いつも勉強になります!』と投稿した事例がありました。投稿した本人に他意はなく純粋なリスペクトだったのですが、役員側は『公の場で部下に能力を値踏みされた』と捉え、強い困惑と不快感を示しました。チャットの手軽さが、目上と目下の間にあるべき心理的境界線を曖昧にしてしまった象徴的なケースです」
「長けている」に限らず、「感心しました」「ご苦労様です」「要領がいいですね」といった言葉は、すべて評価軸が「上から下」に向かう構造を持っています。どれほど絵文字や敬語を添えて外見を取り繕っても、構造的な違和感は相手に伝わってしまうのです。