他人にマウントを取る人間は、一見すると自信満々でプライドが高い強者に見えるかもしれません。しかし臨床心理学やコミュニケーションの現場取材で見えてくるのは、その正反対の姿です。根底にあるのは極めて脆弱な自己肯定感と、激しい他者比較の不安にほかなりません。
彼らが他人を貶める最大の動機は、「承認欲求と劣等感の強烈な相克」です。自分自身の能力や生活に確固たる満足感を持てていないため、自分単体では自己価値を実感できません。他者を踏み台にし、「あの人より私のほうが優れている」という相対的な優位を確認して初めて、かろうじて心の平穏を保っている状態です。
また、相手を言い負かしたり一泡吹かせたりした瞬間に脳内で分泌されるドーパミンによる「勝者効果」へ依存している側面もあります。手軽に手に入る全能感の味を占めてしまうと、会話の目的が「意思疎通」から「相手の制圧」へとすり替わっていきます。つまり、相手が誰であれ隙を見つけては序列確認を繰り返さずにはいられない、心理的な悪循環に囚われているわけです。