羊肉の世界を理解する第一歩は、月齢による明確な区分を知ることにある。一般的に生後1年未満の仔羊を「ラム」、生後1年以上2年未満の羊を「ホゲット」、そして生後2年以上(広義には1年以上)の成熟した大人の羊を「マトン」と分類する。この年齢差が、食感や香り、味わいに劇的な違いをもたらす。
ラム肉の魅力が淡麗な柔らかさとミルキーな軽やかさにあるとすれば、マトンの真骨頂は力強い赤身の濃縮された旨味だ。大人の羊は牧草をたっぷりと食べて運動しながら育つため、筋肉組織が発達し、肉質にしっかりとした弾力が生まれる。さらに、草に含まれるクロロフィル(葉緑素)などの成分が脂質に蓄積することで、羊肉特有の芳醇なアロマが醸成される。噛むたびにジュワリと広がる奥深い余韻は、若年肉では決して到達できないマトンの特権といえる。